もう乗らない車、動かない車を前にして「これ、いくらで引き取ってもらえるんだろう」と調べ始めると、出てくる金額がバラバラです。0円と書いてある業者もあれば、10万円以上の実績を並べている業者もある。どれを信じればいいのか分からなくなります。
先に結論です。廃車買取相場は1台いくらと決まっておらず、車格・車両状態・搬送条件に加え、各社が持つ部品販売や再資源化の経路によって幅が出ます。また、買取額とは別に精算される可能性がある税・保険は、制度ごとに申請者・申請先・条件が異なります。この記事では、値段がつく仕組みと金額の目安、戻るお金・戻らないお金を、公的機関と業界団体の一次情報をもとに整備士の目線で整理します。
廃車買取相場は車格・状態・搬送条件で幅が出る
最初に押さえておいてほしいことがあります。廃車の買取金額について、今回確認した公的機関・業界団体の資料では、全国横断の相場統計を確認できませんでした。中古車の査定には日本自動車査定協会の中古自動車査定基準という共通の物差しがありますが、解体前提の車にはそれに相当する全国共通の価格表がないのです。
ネット上で見つかる「廃車買取相場」には、買取業者や解体業者が自社の買取実績を集計した数字があります。母数・地域・時期・車両状態が資料ごとに異なるため、2026年9月時点の全国一律の買取相場は、確認した公開資料だけでは確定できません。相場を1点で当てにいくのではなく、同じ条件で複数社から見積もりを取り、自分の車がどの幅にいるかを確かめてください。
解体業者が公表している排気量別の平均買取額
幅を掴む参考例として、晋山自動車解体が自社サイトで公開する309台の買取事例集計を見ます。これは単一事業者の事例で、集計期間・地域構成・車両状態を全国相場へ一般化できる資料ではありません。
| 排気量 | 平均買取価格 | 主な車の例 |
|---|---|---|
| 600cc以下 | 8,435円 | 軽自動車 |
| 600〜1,400cc | 19,598円 | コンパクトカー |
| 1,400〜1,800cc | 22,636円 | 小型セダン・ミニバン |
| 1,800〜2,000cc | 29,532円 | セダン・SUV |
| 2,000cc以上 | 35,643円 | 大型SUV・商用バン |
この集計内では、排気量区分が大きいほど平均買取価格が高い結果でした。ただし、排気量と車重は同じ指標ではなく、車種構成・状態・搬送費・部品需要などの条件も分かりません。この表だけで、排気量や輸出需要が価格差の原因だとは断定できません。
「廃車にするしかない車」と「まだ中古車として売れる車」は別物
相場を調べる前に、自分の車がどちらの土俵にいるかを分けてください。ここを間違えると、数万円の話をしているつもりが数十万円を捨てることになります。
- 自走できて、車検が残っている
- 年式が新しい、または人気車種・希少車
- 骨格に損傷がなく、修復歴がつかない
- 過走行でも4WDや商用バンなど需要のある車種
- エンジンやミッションが致命的に壊れている
- 水没・全損・骨格まで及ぶ損傷がある
- 年式が古く、中古車店で「値段がつかない」と言われた
- 車検が切れて長期間動かしていない
境目が微妙な車もあります。判断に迷ったら、中古車としての相場を先に確認してから廃車買取の見積もりを取ってください。相場の作られ方と調べ方は車買取相場は何で決まるかにまとめてあります。
廃車の査定額を左右する主な材料
処分にお金がかかると言われていた車が、今は買い取られる。何かウラがあるんじゃないかと身構える気持ちは分かります。査定方法は事業者ごとに異なりますが、価格を考える材料は主に次の3つです。
1. 鉄と非鉄の素材価値
車は鉄の塊です。ボディもフレームもエンジンブロックも、解体すれば資源として売れます。銅線やアルミホイール、触媒に含まれる貴金属も同じです。
鉄や非鉄金属には市況があります。一般社団法人日本鉄リサイクル工業会が公開する鉄スクラップ価格(H2・持込価格)のページは2026年8月13日更新で、直近の2026年7月は関東・中部・関西の三地区平均が51,000〜52,500円/トン、地域別全体では47,500〜53,500円/トンでした。これはH2鉄スクラップを電炉メーカーまたは輸出用岸壁へ持ち込んで引き渡す際の指標であり、車両重量の全量が同価格で評価される意味ではありません。個別車両の買取額への反映割合も、この資料だけでは分かりません。
素材市況は査定材料の一つになり得ますが、提示額には車両状態、搬送費、部品需要、事業者の販売経路も関わります。鉄価格だけから「値が付く」「0円になる」とは判断せず、同じ条件で複数社の見積もりを比べてください。
2. 中古部品と海外輸出の需要
解体は潰すだけの作業ではありません。使える部品が外され、中古部品として流通する場合があります。エンジン、ミッション、ドア、ヘッドライト、ECU、触媒などが再利用の対象になり、車種・状態・販路によっては部品取り車として評価される可能性があります。
車両や部品が海外向けに再利用される場合もあります。ただし、どの車種・状態に需要があるかを横断比較できる一次データは今回確認できませんでした。特定車種なら高く売れると決めつけず、査定事業者が示す再利用方法と見積もり条件を確認してください。
3. 買取額とは分けて確認する税・保険の精算
税・保険の精算は、車両そのものの買取額と分けて確認します。国税庁の自動車重量税廃車還付制度では、使用済自動車の最終所有者が、解体を事由とする永久抹消登録または解体届出と同時に還付申請を行い、車検残存期間が1か月以上あることなどが条件です。
業者が手続きを代行する場合でも、還付の請求主体、受取口座、買取額へ含めるか別精算にするかは契約内容を確認してください。車検残だけを理由に買取額が上がるとは断定できません。
相場とは別に精算されるお金|戻るもの・戻らないもの

廃車に伴う税・保険・リサイクル料金は、制度ごとに申請者・受取人・条件が異なります。買取業者から戻るお金と、公的機関や保険会社へ申請して受け取るお金を分けて確認します。
| 項目 | 申請・精算の主体 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 自動車重量税 | 使用済自動車の最終所有者が国へ還付申請 | 解体を事由とする抹消・解体届出と同時申請/車検残存1か月以上 |
| 自動車税(種別割) | 原則は都道府県が登録上の納税義務者へ還付。還付請求権を譲渡した場合は債権譲受人が受領する場合がある | 年度途中の抹消。譲渡・転出・3月抹消などは対象外となる場合がある |
| 軽自動車税(種別割) | 月割還付なし | 4月1日時点の所有者へ年額課税 |
| 自賠責保険料 | 保険契約者等が契約先の保険会社・共済へ解約請求 | 抹消を確認できる書類などが必要。返戻額・必要書類は契約先へ確認 |
| リサイクル料金 | 中古車売却では旧所有者が販売店等から相当額を受領。輸出時は輸出者が取戻しを申請 | 解体時は処理費用に充当。輸出取戻しは輸出後2年以内など所定条件を満たす場合 |
自動車重量税は条件を満たせば戻る
条件は前の章で触れたとおりです。大事なのは「廃車にすれば自動的に戻る」わけではないこと。解体を事由とする抹消の手続きと還付申請を同時に出す必要があり、車検残存期間が1か月を切っていると対象外です。手続き自体は、引取業者から解体された旨の連絡を受けた後に行います。
業者に手続きごと任せる場合は、還付申請まで含めてやってくれるのか、還付金は誰の口座に入るのかを契約前に確認してください。
自動車税(種別割)は年度途中の抹消で納税義務者へ還付される
普通車の自動車税(種別割)は、年度途中に抹消登録した場合、原則として都道府県が登録上の納税義務者へ還付します。ただし、納税義務者が還付請求権を譲渡している場合は、債権譲受人が受け取る分岐があります。大阪府の計算例では、既納年税額から「年税額×4月から抹消登録の日が属する月までの月数÷12」を差し引いた額です。買取業者が支払う車両代金とは別の制度なので、名義、還付請求権の譲渡有無、還付先を確認してください。
対象外になるケースもあります。同府は、譲渡した場合、他府県へ転出する登録をした場合、3月中に抹消した場合は還付の対象外だとしています。時間もかかります。書類が届くまで抹消登録の日から1か月半程度、返送してから入金まで4〜6週間程度が目安です。
軽自動車税は月割がないので戻らない
ここは普通車と逆になります。軽自動車税(種別割)の賦課期日は4月1日で、名古屋市は4月2日以後に廃車や譲渡などをしても、その年度の税額の全額を納付する(月割制度はない)と明記しています。
つまり軽自動車を手放すなら、3月中に手続きを終えられるかどうかで翌年度分の課税有無が変わります。年度末に近い時期に廃車を考えているなら、手続き完了日を自治体や依頼先へ確認してください。
自賠責保険は契約先へ解約を請求する
自賠責保険は、廃車しただけでは自動解約されません。国土交通省は、契約している損害保険会社または共済組合で解約手続きをした時点で初めて解約になると説明しています。返戻保険料を受け取る主体と必要書類は、契約者名義と契約先の案内を確認してください。
解約窓口は契約先の損害保険会社・共済です。代理店では手続きできない場合があるため、証明書に記載された契約先へ連絡します。返戻額の計算方法や必要書類は契約先で異なり得るため、引き渡し前に契約者本人が確認してください。
リサイクル料金は売り方で扱いが変わる
リサイクル料金は手放し方で扱いが変わります。自動車リサイクル促進センターは、中古車として売却する場合、旧所有者が販売店等から車両価値金額に加えてリサイクル料金相当額(資金管理料金を除く)を受け取る流れを示しています。見積書で、その相当額が車両代金に含まれるか別建てかを確認してください。また、自動車を輸出した輸出者は、輸出後2年以内など所定条件を満たせば、同センターへリサイクル料金の取戻しを申請できます。
一方、使用済自動車として引き渡す=実際に解体する場合は、預けたお金がそのリサイクルの費用として使われます。廃車時に未預託分があれば、その料金を支払うことになります。解体するなら預託金が現金で返ってくる、という理解は正しくありません。
料金の中身は、自動車メーカー等が設定するシュレッダーダスト・エアバッグ類・フロン類の処理費用に、同センターが設定する情報管理料金130円と資金管理料金(新車購入時290円、引取時410円)が加わる構成です。金額は車種と装備で変わるため、自分の車の預託額は自動車リサイクルシステムの照会で車台番号から確認できます。
査定前にやること・やらなくていいこと【整備士の見方】
売却前に準備するなら、まず書類と車両状態を把握します。板金や消耗品交換に費用をかける前に、その費用が見積額へ反映されるかを買取業者へ確認してください。
複数社に当たるときの進め方や、連絡が集中したときの対処は車買取一括査定の仕組みと注意点で解説しています。
修理して乗るか、廃車にするかの分かれ目
工場で見積もりを出すとき、修理費用と車の残価を並べて説明します。判断のポイントは3つです。
1つめは、骨格の修正が必要かどうか。フレームやピラーまで及ぶ修正は工数が跳ね上がり、直しても修復歴として評価が落ちます。2つめは、重整備が同時に来ているかどうか。エンジンやミッションの載せ替えに、足回りやブレーキ、タイミングベルトの交換時期が重なると、1回の入庫では終わりません。3つめが車検の残りです。修理して車検も通すとなると、修理代に車検費用が上乗せされます。
これらは修理継続と廃車を比較する際の確認項目です。該当数だけで結論を決めず、車検費用の相場と内訳も確認し、修理費・車検費・今後の使用予定と、廃車時の受取額を合算して比べてください。
やらなくていいこと
売る直前の板金塗装、消耗品交換、磨きにかけた費用が、そのまま査定額へ上乗せされるとは限りません。施工前に、現状の見積額と施工後に見込まれる評価差を確認してください。
車検を通してから売るのも同じです。車検費用より重量税の還付額が大きくなることはありません。すでに車検が切れているなら、切れたまま引き取ってもらうほうが合理的です。
純正パーツの有無、記録簿、車種やグレードなどの情報が、各社の再販・部品販売・輸出ルートによって評価材料になる場合があります。手元にある情報は見積もり時に伝えてください。
廃車の手続きは3種類|一時抹消・永久抹消・解体届出
「廃車」と一言でいっても、手続きは3種類あります。国土交通省の自動車検査登録総合ポータルサイトの説明では、次のように整理されています。
| 手続き | どんなとき | 重量税の還付 |
|---|---|---|
| 一時抹消登録 | 使用を一時的に中止するとき(解体はしない) | 対象外 |
| 永久抹消登録 | リサイクル事業者に引き渡して解体処分したとき | 対象(同時に還付申請) |
| 解体届出 | 一時抹消済みの車を解体処理したとき | 対象(同時に還付申請) |
永久抹消登録と解体届出では、解体に係る移動報告番号と解体報告記録がなされた日を記載します。解体が終わっていないと出せない書類なので、業者に引き渡してから解体完了の連絡を待つ流れになります。必要書類と窓口の詳細は廃車の手続き方法と必要書類にまとめました。
廃車買取でよくあるトラブルと避け方
金額の話がまとまった後にも、次のようなトラブル事例が国民生活センターから公表されています。
廃車買取相場のよくある質問
まとめ:幅を掴んで、戻るお金を分けて数える
2026年9月時点の全国一律の廃車買取相場は、確認した公開資料だけでは確定できません。解体業者1社が公開した309台の過去事例では、600cc以下が8千円台、2,000cc以上が3万5千円台の区分平均でした。ただし対象期間・地域・車両状態が不明なため、現在の個別査定額へ一般化はできません。
動く順番はシンプルです。まず中古車として値がつく車かどうかを分ける。次に買取額の見積もりを複数社から同じ条件で取る。最後に、重量税・自動車税・自賠責の返戻が買取額に含まれているのか別なのかを確認する。軽自動車税だけは戻らないこと、リサイクル預託金は解体では現金で返ってこないこと。この2つを覚えておけば、見積もりの読み違いはなくなります。
そして、車を渡す前にキャンセル期限・費用・税や保険の申請主体を契約書で確認してください。車の売却はクーリング・オフの対象外ですが、契約解除の可否は契約条項と個別事情によって異なり、引き渡し後は一律に取消不能というわけではありません。
廃車の引取・買取について三咲モータースへ相談する場合は、車種、保管場所、自走可否、車検の有無、現在の状態をお知らせください。
参考にした一次情報
- 国税庁 タックスアンサー No.7193「使用済自動車に係る自動車重量税の廃車還付制度」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7193.htm
- 大阪府「自動車税還付金の概要」https://www.pref.osaka.lg.jp/o050160/osakajidoshazei/kanpukin/index.html
- 名古屋市「軽自動車税(種別割)について」https://www.city.nagoya.jp/zaisei/page/0000155524.html
- 国土交通省「自賠責保険 よくあるご質問」https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/faq/index.html
- 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター「リサイクル料金の支払い・受け取りの流れ」https://www.jarc.or.jp/automobile/fee/timing/
- 公益財団法人 自動車リサイクル促進センター「リサイクル料金内訳」https://www.jarc.or.jp/automobile/fee/feeindex/
- 国土交通省 自動車検査登録総合ポータルサイト「抹消登録」https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/jidousha/kensatoroku/about/register/erase/index.html
- 国土交通省 自動車検査登録総合ポータルサイト「一時抹消登録後の届出」https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/jidousha/kensatoroku/about/register/deregistration/index.html
- 一般社団法人日本鉄リサイクル工業会「鉄スクラップ価格(H2・持込価格)」https://www.jisri.or.jp/kakaku
- 晋山自動車解体「【排気量別】廃車の買取相場 〜309台の買取事例から計算〜」https://www.sjk-recycle.com/souba/
- 独立行政法人 国民生活センター「車を売る際は要注意!中古車の売却トラブル」(2024年6月18日公表)https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20240618_1.html




