車検が切れた車で公道を走ると、違反点数6点、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります。前歴がなく、ほかの累積点数もない人なら、処分量定の基準上は免許停止30日です。
ここでよくあるのが「反則金を払って終わりでしょ」という思い込みです。車検切れは青切符で処理される違反ではありません。自賠責保険まで切れていれば刑事罰の上限はさらに重くなります。検査標章(車検ステッカー)についても、表示しないまま運行する場合と、期限切れの標章を表示し続ける場合で別の罰則があります。
この記事では、車検切れで科される罰則を根拠の条文ごとに整理します。数字の出どころが分かると、ネット上でばらついている「6点」「30万円」「50万円」がそれぞれ何の話なのかが噛み合います。制度そのものを先に押さえたい方は車検とは何を検査する制度かもあわせてどうぞ。
車検切れの罰則は違反点数6点と「6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」

車検が切れた車で公道を走る行為を「無車検運行」といいます。科されるものは2系統あって、刑事罰(拘禁刑・罰金)と行政処分(違反点数・免許停止)は別々に動きます。片方で終わるとは限りません。
| 違反 | 根拠条文 | 刑事罰の上限 | 違反点数 |
|---|---|---|---|
| 無車検運行(車検切れで走る) | 道路運送車両法 第58条第1項・第108条 | 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 | 6点 |
| 無保険運行(自賠責切れで走る) | 自動車損害賠償保障法 第5条・第86条の3 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 6点 |
| 車検証を備え付けず、または検査標章を表示せず運行 | 道路運送車両法 第66条第1項・第109条第9号 | 50万円以下の罰金 | — |
| 失効後の検査標章を表示 | 道路運送車両法 第66条第5項・第110条第1号 | 30万円以下の罰金 | — |
| 自賠責保険証明書の不備付け | 自動車損害賠償保障法 第8条・第88条第1号 | 30万円以下の罰金 | — |
刑事罰の根拠は道路運送車両法第58条と第108条
道路運送車両法第58条第1項は、自動車について「国土交通大臣の行う検査を受け、有効な自動車検査証の交付を受けているものでなければ、これを運行の用に供してはならない」と定めています。この規定に違反した場合の罰則が第108条で、条文は「六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する」と書かれています。
少し前の解説記事だと「6か月以下の懲役」と書かれていることがあります。これは間違いというより、古いままなだけです。2025年6月1日に施行された改正刑法で懲役と禁錮が拘禁刑に一本化され、条文の側が書き換わりました。
違反点数6点、前歴・ほかの累積点数がなければ免許停止30日
行政処分側を見ます。道路交通法施行令の別表第二に、無車検運行と無保険運行がまとめて6点の区分として並んでいます。同じ表の備考で、無車検運行とは道路運送車両法第58条第1項に違反する行為だと定義づけられています。
6点がどう効くか。別表第三の一の表では、前歴がない人の「6点から14点まで」が免許の効力の停止に当たる区分です。そのうえで警察庁が公表している処分量定基準では、前歴がなく、ほかの累積点数もない人が今回の違反で6点になった場合は停止30日とされています。一発免停、というのはこの意味です。
過去に前歴があったり、直前の違反の点数が残っていたりすれば、区分はもっと上へ動きます。「6点だから必ず30日」ではなく、前歴なしのときの基本の量定だと理解してください。
自賠責保険も切れていると、罰則はさらに重くなる
車検と自賠責の期限は同じとは限りませんが、更新時期が近い場合があります。車検切れに気づいたら、自賠責も有効だと決めつけず、証明書ごとに満了日を確認してください。
無保険運行は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
自動車損害賠償保障法第5条は、自賠責保険(または責任共済)の契約が締結されている車でなければ運行の用に供してはならないと定めています。違反したときの罰則は第86条の3で、「一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」です。刑事罰の上限だけを比べると、無車検運行より重い。違反点数は無車検運行と同じ6点です。
証明書を積んでいないだけでも30万円以下の罰金
もうひとつ、見落とされがちな条文があります。自賠法第8条は、自賠責保険証明書を備え付けなければ運行の用に供してはならないと定めていて、違反すると第88条第1号で30万円以下の罰金です。保険自体は有効でも、証明書が家の書類ケースに入ったままだと引っかかります。
自賠責保険証明書は紙だけでなく、2024年11月以降は契約先からPDFで交付を受けた電子証明書を備え付ける方法も認められています。紙なら車内の書類入れへ戻し、PDFなら求められたときにすぐ明瞭に表示できる状態で保存してください。交付方法や表示方法は契約している保険会社へ確認しましょう。
車検切れは青切符では済まない。反則金の制度が使えない理由
「その場で反則金を払えば終わり」という処理ができるのは、交通反則通告制度、いわゆる青切符の対象になる違反だけです。道路交通法第125条第1項は、反則行為を「前章の罪に当たる行為のうち別表第二の上欄に掲げるもの」と定義しています。前章とは道路交通法の罰則の章のことです。
ここが分かれ目になります。無車検運行は道路運送車両法の違反、無保険運行は自賠法の違反で、どちらも道路交通法の罪ではありません。反則金の枠組みの外にあるため、反則金を納めて終わりという道筋がそもそも用意されていない、という構造です。
見落としやすい罰則|車検シールの非表示運行は50万円、期限切れ表示は30万円以下の罰金
意外と知られていない条文があります。国土交通省も車検ステッカーの罰則を案内しています。道路運送車両法第66条第1項は「自動車は、自動車検査証を備え付け、かつ、国土交通省令で定めるところにより検査標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない」と定めています。検査標章はフロントガラスの車検シールのことです。
車検証を備え付けず、または検査標章を表示しないまま運行すると、第109条第9号で50万円以下の罰金です。単に駐車中の車へシールを貼っていないだけで直ちに50万円という意味ではなく、「運行の用に供した」ことが要件です。
同じ第66条の第5項では、車検証が効力を失ったときに検査標章を表示してはならないと定めています。期限切れの車検ステッカーを表示し続けた場合は、第110条第1号により30万円以下の罰金の対象です。こちらは第109条第9号の「表示せず運行」とは別の違反です。
車検切れはどこで発覚するのか
「検問に当たらなければ分からないのでは」と思われがちですが、国土交通省は街頭検査で可搬式のナンバー自動読取装置を使っています。走行中の車のナンバーを自動で読み取り、車検の有無を照合して、該当した車のドライバーへその場で指導・警告する仕組みです。
2017年度に5か所で試行され、読み取った3,696台のうち7台が車検切れとして警告書の交付を受けました。翌2018年9月からは全国の街頭検査へ導入されています。
走らせていなくても接触はあります。国土交通省は保有している車検証情報から、車検切れになって1年以内の車の使用者に対して注意喚起のハガキを送っています。無車検車・無保険車の通報窓口も設けられていて、そこに通報された車の使用者もハガキの対象です。
保管だけなら無車検運行ではない。ただし期限切れ標章と税金には注意
無車検運行の規定は「運行の用に供してはならない」という書き方です。車検が切れた車を保管しているだけでは、無車検運行にはなりません。ただし、失効した検査標章を表示し続ける行為は第66条第5項で別に禁じられているため、車検切れに気づいたら表示をそのままにせず、車を動かさない状態で整備工場や運輸支局へ対応を確認してください。
登録自動車は運輸支局で抹消すると月割で減額・還付
普通車などの登録自動車にかかる自動車税種別割は、車検の有効期間とは別に扱われます。年度の途中で運輸支局または自動車検査登録事務所で抹消登録すると、抹消した月の翌月から3月分までが月割で減額され、納付済みなら差額が還付されます。車を業者へ渡した日ではなく、抹消登録日が基準です。
軽自動車は軽自動車検査協会で返納。原則として月割還付なし
軽自動車は仕組みが異なります。軽自動車税種別割は原則として4月1日時点の所有者に1年度分が課税され、年度途中に廃車しても月割で還付する制度はありません。翌年度以降の課税を止めるには、軽自動車検査協会で自動車検査証返納届などの手続きを行います。税の申告先や名称は自治体によって案内が異なるため、車の定置場を管轄する市区町村にも確認してください。
もう乗らないと決めているなら、車種に合った窓口で早めに廃車手続きを進めてください。全体の流れは廃車の手続き方法にまとめてあります。
罰則を避けるために、今やること
車検が切れていると気づいた時点で、やることは3つだけです。
- エンジンをかけて公道へ出ない。距離が短くても例外はありません
- 車検証と自賠責保険証明書の満了日を両方確認する
- 整備工場へ連絡し、積載車での引き取りか、自動車臨時運行許可(仮ナンバー)かを決める
工場が車検切れの車を引き取るときは、自走させずに積載車を使います。理由は単純で、罰則の対象になるのは車を運行させた側だからです。「工場の人が運転するなら大丈夫」ということにはなりません。
移動方法や再車検までの具体的な手順は車検満了日を過ぎたときの動かし方と再車検の流れで解説しています。検査で何を見られるかを先に知っておきたい方は車検の点検項目一覧もどうぞ。
車検切れの罰則に関するよくある質問
まとめ|罰則の重さは点数・刑事罰・税金の3方向から来る
車検切れの罰則は、ひとつの数字では説明できません。行政処分としての6点と免許停止30日、刑事罰としての拘禁刑または罰金、そして走らせなくても続く税金。この3方向を分けて見ると、ばらついていた数字がきれいに整理できます。
- 無車検運行は6点。前歴・ほかの累積点数がなければ免許停止30日
- 刑事罰は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。自賠責も切れていれば上限はさらに重い
- 反則金では処理されない。車検シールを表示せず運行すると50万円以下、期限切れ表示は30万円以下の罰金
- 走らせなくても、登録がある限り自動車税種別割または軽自動車税種別割は課税される
気づいたら、まず公道を走らせないこと。車検証と自賠責保険証明書の期限を確認し、積載車や仮ナンバーなどの移動方法を整備工場または運輸支局へ相談してください。具体的な手順は車検満了日を過ぎたときの動かし方と再車検の流れで確認できます。




