ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの違いは、燃料に火をつける方法にあります。ガソリンは点火プラグの火花で燃やし、ディーゼルは圧縮した空気の熱で軽油を自己着火させます。
ここが変わるだけで、力の出方も、燃料にかかる税金も、エンジンオイルの規格も、車検で測る項目まで連鎖して変わります。カタログの燃費欄だけを見比べても、この差は見えてきません。
この記事では、着火の仕組みから燃料規格、走りの性格、2025年から2026年にかけて変わった燃料税、整備で増える管理項目、車検の検査内容までを順に整理します。読み終える頃には、年間走行距離と1回の走行時間から、自分にどちらが向くか判断できます。
ガソリンとディーゼルの違いは着火のさせ方と燃料

2つのエンジンは、空気と燃料を混ぜて燃やし、その圧力でピストンを押す点までは同じです。分かれるのは、その混合気にどうやって火をつけるかという一点です。ここから燃料の種類が決まり、圧縮比が決まり、力の出方や整備の中身まで枝分かれしていきます。
主な違いを先に一覧にします。
| 項目 | ガソリンエンジン | ディーゼルエンジン |
|---|---|---|
| 燃料 | ガソリン(JIS K 2202) | 軽油(JIS K 2204) |
| 着火のさせ方 | 点火プラグの火花で着火 | 圧縮した空気の熱で自己着火 |
| 点火プラグ | あり | なし(始動時はグロープラグで暖める) |
| 圧縮比 | ノッキングを避けるため低め | 高い |
| 力が出る回転域 | 高回転で高出力 | 低回転から大きなトルク |
| 記事で比較する税目 | 揮発油税等28.7円/L(2025年12月31日以降) | 軽油引取税15円/L(東京都、2026年4月1日以降) |
| エンジンオイル | ガソリン用の規格 | 後処理装置に対応した規格 |
| 車検の排出ガス検査 | COとHCの濃度 | 黒煙の濃さ |
この表の下3行が、買ったあとの扱い方と費用に直接効いてくる部分です。
火花で着火するガソリン、圧縮した空気の熱で着火するディーゼル
日本自動車連盟(JAF)の解説では、ガソリンエンジンにはスパークプラグが付いていて、空気とガソリンが混ざった混合気を燃焼させると説明されています。運転者がアクセルを踏むと、燃料と空気を混ぜた気体がシリンダーに入り、決められたタイミングで火花が飛びます。
ディーゼルエンジンには、この点火プラグがありません。空気だけを強く圧縮して高温にし、そこへ軽油を噴射して自然発火させます。冷えている始動時だけはグロープラグで燃焼室を暖め、その後は自然発火で動き続けます。
圧縮の強さを示す圧縮比も、この差に合わせて別の値になっています。同じ解説では、ディーゼルはシリンダー内を高温にするため圧縮比が高めとされています。ガソリンは圧縮比を上げすぎると自然発火し、ノッキングという異常燃焼が起きるため低めに抑えられています。
整備の側から見ると、点火プラグがないことは交換部品が1つ減ることを意味します。そのかわり、ディーゼルには後述するDPFという別の管理項目が増えます。
燃えにくさを求めるガソリン、燃えやすさを求める軽油
着火のさせ方が逆なので、燃料に求められる性質も逆になります。ガソリンに求められるのは、点火プラグが火花を飛ばす前に勝手に燃え出さないことです。この性質を数値にしたものがオクタン価です。
ENEOSの石油便覧によれば、自動車ガソリンはJIS K 2202でハイオク(1号・オクタン価96以上)とレギュラー(2号・オクタン価89以上)に分類されています。
軽油に求められるのは正反対で、圧縮された高温の空気に触れた瞬間に燃え始めることです。こちらの指標がセタン指数で、JIS K 2204では特1号が50以上、それ以外が45以上と定められています。
軽油にはもう1つ、ガソリンにはない区分があります。同じ石油便覧では、軽油は流動点の違いで特1号から特3号まで5種類に分かれると説明されています。流動点は特1号がプラス5度以下、1号がマイナス2.5度以下、2号がマイナス7.5度以下、3号がマイナス20度以下、特3号がマイナス30度以下です。
寒い時期の寒冷地では、低い流動点の号数が給油所で供給されます。暖かい地域で入れた号数のまま寒冷地へ入ると、気温が流動点を下回ったときに燃料が流れにくくなります。冬の長距離移動が多いなら、この号数の存在は覚えておく価値があります。ガソリンにはこうした使い分けがありません。
走りの違いは力が出る回転域に表れる

試乗で最初に感じるのは、アクセルを踏んだときの力の出方の違いです。トルクは回そうとする力の大きさ、出力はその力を単位時間あたりでどれだけ出せるかを示します。
JAFの解説では、ディーゼルエンジンは大きなトルクを発揮しやすく、ガソリンエンジンは高回転で高出力を発揮しやすいとされています。この差は、圧縮比の高さと構造の違いから生まれます。
運転していて分かりやすいのは、発進と登坂です。ディーゼルはアクセルを深く踏まなくても低い回転のまま車体が前に出ます。ガソリンは回転を上げていくほど気持ちよく伸び、高速の合流や追い越しで扱いやすさが出ます。
牽引や積載の多い使い方ではディーゼルの低回転トルクが効き、街中を軽快に流す使い方ではガソリンの回り方が合います。
燃料にかかる税金の差は13.7円まで縮まった

ディーゼルが選ばれてきた大きな理由は、軽油がガソリンより安く買えることでした。その価格差を作っていたのが、燃料にかかる税金の差です。この前提が、2025年から2026年にかけての税制改正で変わりました。
ガソリン税28.7円、軽油引取税15円が現在の税率
国税庁の資料によれば、令和7年12月の租税特別措置法改正で揮発油税等の特例税率(合わせて53.8円/ℓ)が廃止されました。揮発油税と地方揮発油税を合わせた税額は、1キロリットルあたり53,800円から28,700円になっています。1リットルに直すと53.8円から28.7円です。廃止日は令和7年12月31日です。
軽油側の改正はその約3か月後です。東京都主税局の案内では、軽油引取税のいわゆる暫定税率が令和8年4月1日に廃止され、1キロリットル当たり32,100円の税率から15,000円の税率へ変わったとされています。1リットルあたり32.1円が15円になった計算です。
| 燃料 | 改正前の税額 | 現在の税額 | 改正の施行日 |
|---|---|---|---|
| ガソリン | 53.8円/L | 28.7円/L | 2025年12月31日 |
| 軽油 | 32.1円/L | 15円/L | 2026年4月1日 |
税額は、ガソリンと軽油で課税の仕組みが異なります。燃料費の比較では、税額だけでなく、実際の店頭価格、燃費、車両価格、使用条件を分けて確認してください。
税差が縮んだぶん、燃費差の重みが増した
税額の差だけで車種の購入判断はできません。燃料費を比べるときは、同じ時点・同じ地域の店頭価格と、検討する車種の燃費を使って計算します。
判断の重心は、車ごとの燃費差と年間走行距離に移りました。同じ車格で燃費に差があるなら、年間で何リットル使うかを掛け合わせて比べるのが現実的です。
年間走行距離による燃料費の差は、検討する車種の燃費と店頭価格を使って試算します。走行距離だけでガソリン車とディーゼル車の優劣を決めず、車両価格や使用条件も合わせて比較してください。
整備で変わるのはエンジンオイルの規格とDPFの2点

買ったあとに確認するのは、エンジンオイルの指定規格と、ディーゼル車にあるDPFなど排気後処理装置の取扱条件です。車種ごとに指定が異なるため、取扱説明書と販売店の案内で確認してください。
ディーゼル用オイルは後処理装置を守るために成分が規定されている
エンジンオイルは、ガソリン用とディーゼル用で別系統の規格が使われます。日本自動車工業会の説明では、乗用車クラス用の規格であるDL-1は硫酸灰分を0.6%以下に規定しています。2021年に追加されたDL-2は、欧州ACEA C規格相当の0.7%以上0.8%以下を規定しています。
硫酸灰分は油中の金属分の指標です。DL-1とDL-2は許容量の設定が異なります。実際に使用できる規格は車種ごとの指定によるため、銘柄や規格を選ぶ前に取扱説明書とメーカー・販売店の案内で確認してください。
ガソリン用のオイルはこの前提で作られていないため、ディーゼル車に入れる想定がありません。自分の車に何を入れるべきかは、取扱説明書の指定規格を見るのが確実です。規格の表記が読めるようになると、店頭で銘柄に迷う時間がなくなります。
取扱説明書でJASO DL-1が指定されているディーゼル車に使えるオイルの例です。DL-2指定の車には使わず、指定規格の製品を選んでください。
vervis(バービス) DIESEL 5W-30 4L(JASO DL-1)
関連記事:エンジンオイルのグレード(規格)とは|SPやSNの意味を解説
DPFは車種ごとの取扱条件を確認する
DPFは、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕まえて除去する装置です。捕まえた煤は走行中の熱で焼かれ、自動的に処理されていきます。この自動処理には条件があります。
マツダCX-5の電子取扱説明書は、PMが自動で除去されない走り方として次の3つを挙げています。
- 車速約15km/h以下で走り続けているとき
- 10分以下の短時間走行の繰り返しや、エンジンが暖機できないような走行を繰り返したとき
- 長時間アイドリング状態のとき
同じ説明書によれば、CX-5ではPMの除去が自動で行われず捕集量が規定量以上になると表示灯が点灯し、システムに異常があるときは点滅します。点灯時の走行条件もCX-5向けの案内です。他の車種で同じ速度や時間を当てはめず、取扱説明書の指示に従ってください。
短距離走行が多い場合の扱いは、検討する車種の取扱説明書と販売店の案内を確認してください。距離だけで適否を断定せず、使用条件に関するメーカーの注意事項を基に選びます。
関連記事:エンジン警告灯が点灯・点滅したら走れる?原因と対処法を整備士が解説
車検の排出ガス検査は測る項目そのものが違う

車検の排出ガス検査は、どちらのエンジンでも行われます。ただし測っているものが別です。
国土交通省がまとめた使用過程車の排出ガス規制値では、ガソリン車とLPG車はアイドリング時のCO(一酸化炭素)濃度とHC(炭化水素)濃度で規制されています。普通自動車と小型自動車のCOは昭和47年10月1日以降の車で4.5%以下、4サイクル乗用車のHCは昭和50年1月1日以降の車で1,200ppm以下です。
ディーゼル車の項目は黒煙です。同じ資料では、無負荷急加速時の黒煙汚染度で規制され、平成9年以降の規制対応車は25%とされています。
測り方も一度変わっています。国土交通省の整備工場向け通知によれば、黒煙測定器に代わってオパシメータという機器で光の吸収係数を測る方式が導入されました。自分の車がどちらの測定対象かは、車検証の備考欄で分かります。そこに「オパシメータ測定」と記載があれば、オパシメータで測る車です。
黒煙や排出ガスに関する診断は車種と状態で異なります。警告灯や異常を確認した場合は、取扱説明書の指示に従い、整備事業者へ点検を依頼してください。
年間走行距離と1回の走行条件を比べる

年間走行距離と1回の走行条件は、比較に使う入力値です。ただし燃料費は実燃費と店頭価格、DPFの扱いは車種別の取扱条件にも左右されます。距離や時間だけで結論を出さず、候補車種ごとに確認してください。
| 確認項目 | 比較する方法 |
|---|---|
| 年間の燃料費 | 候補車種ごとに、年間走行距離÷実燃費×同じ時点・地域の店頭価格で試算する |
| DPFの取扱条件 | 候補のディーゼル車ごとに、取扱説明書の短距離走行・表示灯・再生に関する注意事項を確認する |
| 購入時と整備時の費用 | 車両価格、指定オイル、点検・整備の見積もりを同じ条件で並べる |
| 走りの好みと用途 | 試乗やメーカー諸元で、積載時の使い方、加速時の特性、静粛性を確認する |
走行距離と運転時間を確認したら、候補車種の燃費、店頭価格、取扱説明書の注意事項、購入・整備の見積もりを同じ条件で並べます。ディーゼル車を検討する場合は、DPFの取扱条件が普段の使い方に合うかを車種ごとに確認してください。
まとめ。着火方法の違いが、税金も整備も車検も変える

ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの違いは、点火プラグの火花で着火するか、圧縮した空気の熱で自己着火するかにあります。燃料はガソリンが燃えにくさを、軽油が燃えやすさを求められ、規格も指標も別です。
走りは、ディーゼルが低回転のトルク、ガソリンが高回転の出力という形で差が出ます。記事で比較した税目は、揮発油税等28.7円/Lと東京都の軽油引取税15円/Lです。店頭価格や税の全体像とは分けて確認してください。整備では指定オイル規格とDPFの取扱条件、車検では排出ガスの測定項目が異なります。
年間走行距離と1回の走行条件を出発点に、候補車種の燃費、地域の店頭価格、取扱説明書の指定、購入・整備費用を同じ条件で比べてください。どちらを選んでも、エンジンオイルは車種が指定する規格を確認して使用します。




