エンジン

エンジンオイルのベースオイルの種類|鉱物油や化学合成油の違いを解説

エンジンオイルのベースオイルの種類|鉱物油や化学合成油の違いを解説

エンジンオイルの中身の75〜95%はベースオイル(基油)で、残りが添加剤です。オイルの値段と持ちは、ほとんどこのベースオイルで決まります。

先に結論を書きます。街乗り中心で、決めた距離をこまめに換えられるなら鉱物油で足ります。高速や山道をよく走る、ターボ車、寒冷地、交換の間隔を延ばしたい——このどれかに当てはまるなら化学合成油です。ただしどちらを選ぶにしても、取扱説明書が指定する粘度(0W-20など)とAPI・ILSACの規格を満たしていることが先で、ベースオイルの種類はその次に見る条件になります。

もうひとつ、店頭で誤解しやすい点があります。「全合成油」と書いてあるオイルの中身が、必ずPAOやエステルとは限りません。この記事では、APIのベースオイル分類と実際の商品表示のズレまで含めて解説します。

エンジンオイルの性能はベースオイルで決まる

エンジンオイルを構成するベースオイルと添加剤の割合
エンジンオイルの大部分を占めるベースオイルに、目的別の添加剤を組み合わせて性能を作ります。

ベースオイルとは読んで字のごとく、エンジンオイルを構成しているベースとなるオイルのことを指します。

自動車用エンジンオイルの添加剤の配合量は、種類にもよりますがおおむね5〜25%です。裏を返せば、残りの75〜95%がベースオイルということになります(出典:ENEOS 石油便覧)。「約8割」という言い方をよく見かけますが、これはこの幅の中の一点にすぎません。

添加剤は清浄分散剤や酸化防止剤、摩耗防止剤などで、ベースオイルだけでは足りない働きを補うものです。オイルそのものが何をしているかはエンジンオイルの役割で解説しています。

つまり、エンジンオイルの性能差はこのベースオイルの違いによって決まってきます。このベースオイルにもそれぞれグレードが存在し、API(アメリカ石油協会)が定める分類によってその性能が決まってきます。

ベースオイルの分類分け

APIはベースオイルをグループI〜Vの5つに分けています。ここで大事なのは、この5つが品質の順位ではないという点です。分け方は粘度指数・硫黄分・飽和分という組成の数値で機械的に決まっていて、グループVにいたっては「グループI〜IVのどれにも当てはまらないベースオイルすべて」という定義です(出典:API 1509 Annex E)。番号が大きいほど上等、ではありません。

グループ区分組成の条件(API 1509 Annex E)
グループI鉱油系飽和分90%未満、または硫黄分0.03%超。粘度指数80以上120未満
グループII鉱油系(水素化精製)飽和分90%以上かつ硫黄分0.03%以下。粘度指数80以上120未満
グループIII鉱油系(高粘度指数・VHVI)飽和分90%以上かつ硫黄分0.03%以下。粘度指数120以上
グループIV合成基油PAO(ポリアルファオレフィン)
グループVその他すべてグループI〜IVに含まれないベースオイル(エステル、PAGなど)

API分類でいえば、グループI〜IIIが原油からつくる鉱油系、グループIV以降が合成基油です。ただしこれは分類上の話で、商品の表示とは一致しません。グループIIIは原油由来の鉱油系ですが、日本では慣行として「全合成油」「100%化学合成油」と表示して売られています。パッケージの「全合成油」だけを見て、PAOやエステルが入っていると判断することはできません。

PAOとエステルは、得意なことが違います。PAOは粘度指数が高く(PAO6でおよそ136。鉱油は106前後)、流動点が-65℃と低いので、寒いところでの始動性と高温での安定性に強い。反面、添加剤が溶けにくく、コストも高くつきます。エステルは油膜の保持や清浄性に優れますが、市販のエンジンオイルでエステルだけを基油にした製品はまれで、PAOや鉱油に少量混ぜて使われるのが実際のところです(出典:ジュンツウネット21)。どちらが上という話ではありません。

ベースオイルの種類

鉱物油・部分合成油・化学合成油の作り方と特徴
鉱物油・部分合成油・化学合成油は作り方と価格、温度変化への強さが異なります。

先述したグループ分けで出てきた鉱物油や合成油といったもの。これについて解説をしていきます。ベースオイルは大別すると3種類に分けることができます。

鉱物油最も安価なオイル。性能は低い
部分合成油鉱物油と化学合成油を混ぜたもの。部分合成油でも製品によっては性能差がある。
化学合成油製造コストは高いが性能も安定している。整備工場で取り扱っているエンジンオイルは基本的に化学合成油になる。

「合成油」は原油をそのまま精製したものではありません。PAOはエチレンを低重合するか、ワックスを熱分解して得た1-デセンなどのα-オレフィンを重合し、水素化してつくります。エステルは酸とアルコールを反応させた合成物で、原料が原油とは限りません。分子の形をそろえて狙った性能を出せるところが、蒸留と精製でつくる鉱油との違いです。

鉱物油

オイルの元となる原油から蒸留、精製されたものを鉱物油。不純物を取り除いて作れられたオイルとなっており、流通しているエンジンオイルで比較的安いものはこちらの部類になる。 エンジンオイルとして最低限の性能を持ちながらも、デメリットとして酸化のしやすさが挙げられます。外気やエンジンの熱などの劣化が著しいため、頻繁にオイル交換を行う必要があります。

部分合成油

鉱油系の基油と合成基油を混ぜたオイルです。鉱物油より持ちがよく、化学合成油ほどではない、という位置づけになります。ただし配合比率に公的な決まりがないため、「部分合成油」という表示だけでは合成基油がどれだけ入っているか分かりません。銘柄ごとに中身の差が大きいところです。

化学合成油

合成基油を主体にしたオイルです。分子の大きさがそろっているぶん高温で蒸発しにくく、摩擦も少なく、酸化にも強い。そのため交換の間隔を延ばしやすいのが利点です。整備工場で扱うオイルは化学合成油が中心になります。ただし前述のとおり、日本で「100%化学合成油」と表示されている製品には、グループIII(鉱油系)を使ったものも含まれます。

鉱物油と化学合成油はどこが違うのか

鉱物油・部分合成油・化学合成油の特徴比較
価格だけでなく、低温性能、高温・酸化への強さ、使い方を並べて比較します。

違いを言葉で並べても選べないので、実際に効いてくる5つの軸で並べます。

鉱物油部分合成油化学合成油
価格安い中間高い
交換の目安メーカー指定の下限側で早めに指定どおり指定どおり
低温での始動性普通やや良い良い
高温・酸化への強さ弱い普通強い
向いている使い方街乗り中心でこまめに交換できる迷ったときの中間高速・山道・ターボ車・寒冷地

交換の間隔は、まず取扱説明書の指定が優先です。指定がすぐ分からないときの目安として、JAFはガソリン車で15,000kmまたは1年、軽自動車で10,000kmまたは6か月、ガソリンターボ車で10,000kmまたは6か月、軽のターボ車で5,000kmまたは6か月を挙げています。短距離の繰り返しや山道の多用といったシビアコンディションでは、この半分程度が目安です(出典:JAF)。鉱物油はこの範囲の下限側、化学合成油は上限側で考えると外しません。

1回あたりの値段だけを比べると鉱物油が有利に見えますが、交換の回数まで含めた1年の負担で見ると差は縮みます。実売の価格帯はエンジンオイルの値段、工賃込みの相場はオイル交換費用の相場で確認してください。

ベースオイルで判断するオイル選び

使用条件からベースオイルの候補を絞る流れ
車両指定の規格・粘度を満たしたうえで、予算や使用環境から候補を絞ります。

エンジンオイルを選ぶ際に、成分表などを見る方も少なくないと思います。ベースオイルをエンジンオイル選びの基準の1つとしてみるとした際、どのように判断すればいいのかを解説します。

安く済ませたい場合は”鉱物油”

性能面よりも値段で選ぶ場合は鉱物油一択です。先述したように性能面で劣る部分はあるものの、市販されている以上、使っても問題ない商品がほとんどでしょう。

デメリットとしては「頻繁にオイル交換をすること」「車によっては合わないものもある」という2点を念頭に入れておきましょう。

交換の間隔は取扱説明書の指定が最優先です。そのうえで鉱物油を使うなら、指定された範囲の下限側で早めに換えるのが安全側の選択になります。シビアコンディションに当てはまる乗り方をしているなら、さらに短くしてください。

車種によっては、オイルが合わない場合もあるため異音や燃費悪化といった症状が出る可能性も考えられます。その場合はよりグレードの高いオイルに交換するようにしてください。特に過走行車や年式が古い車には要注意です。

安心して使うなら”化学合成油”

上記のようなデメリットが心配な方は、迷わずに化学合成油のエンジンオイルを選びましょう。ホームセンターやAmazonでも気軽に購入はできます。値段もものによっては、安価なものも販売されています。

銘柄で迷う場合は、エンジンオイルのおすすめで用途別に整理しています。銘柄より先に、指定粘度とAPI・ILSACの規格を満たしているかを確認してください。

関連記事:【基礎知識】エンジンオイルの選び方・交換時期の解説

「全合成油」と書いてあっても中身は同じとは限らない

全合成油表示に含まれるグループIII・PAO・エステルの違い
全合成油という表示だけでは基油を特定できないため、メーカー資料やSDSも確認します。

ここが店頭でいちばん間違えやすいところです。API分類では合成基油はグループIV(PAO)とグループV(エステルなど)ですが、日本ではグループIII(原油からつくる高粘度指数の鉱油系)を使った製品も「全合成油」「100%化学合成油」として売られています。表示のルール違反ではなく、慣行としてそうなっています。

つまり同じ「全合成油」でも、中身がグループIIIのものとPAOベースのものが混在しています。値段の差はここに出ていることが多い。

中身を確かめたいときは、パッケージではなくメーカーの製品ページやSDS、技術資料でベースオイルの種類(PAO、エステル、VHVIなど)の記載を探してください。記載が無ければそこは分からないものとして扱い、粘度とAPI・ILSACの規格で判断します。規格の読み方はエンジンオイルのグレードで解説しています。

ベースオイルの鉱物油と化学合成油の違いまとめ

エンジンオイルを規格・粘度・用途・資料で確認する順序
車両指定、粘度、使用環境、製品資料の順に確認すると選択ミスを減らせます。

ベースオイルはエンジンオイルの性能を決定つける要素になります。

ベースオイルを意識すると、なぜこのオイルは高いのか?なぜこんなに安いオイルがあるのか?などがわかるようになります。性能面にも影響してくるので、ぜひ参考にしてみてください。

こんにちは!メカラブ編集部です!現役整備士として現場で整備に携わっていて、そこで培った経験や実際のお客さんとのやり取りなどを通して、記事に落とし込んでいます。現場目線のリアルな生きた情報を届けることをモットーに記事を書いているので、自動車大好きな方はぜひご参考にしてください!