タイヤを覗き込んだら外側の肩だけがつるつるで、内側にはまだ溝が残っている。これが外べり(片減りの一種)です。外側だけが減っているとき、原因を空気圧だけで説明することはできません。空気が足りないタイヤは外側と内側の両方の肩が同時に減るからです(一般社団法人日本自動車タイヤ協会)。片側だけが減っているなら、疑うべきはアライメント、走り方、そして走っている路面の傾きです。
この記事では、外べりの原因の切り分け方に加えて、外側だけ減ったタイヤが車検に通るのかどうか、どこまで減ったら交換なのか、1本だけ・左側だけ減るのはなぜかまで、法令と協会・メーカーの公表資料をもとに整備士がまとめます。
タイヤの外べり(外側だけ減る片減り)とは
外べりは、トレッド(接地面)のうち車体の外側にあたるショルダー部だけが早く摩耗した状態を指します。外減り、片減り、偏摩耗とも呼ばれます。タイヤメーカーの分類では、片側のショルダーだけが減るものを「片側摩耗」、外側のショルダーが段差になって集中的に減るものを「ステップ摩耗」と呼び分けています(横浜ゴム)。
外べり・内べり・両肩減り・センター減りの見分け方
減り方の形で原因はかなり絞り込めます。まずは4本すべてを正面から覗き込み、どのタイプに当てはまるかを確認してください。

| 減り方 | 見た目 | 主に疑う原因 |
|---|---|---|
| 外べり(片側摩耗・ステップ摩耗) | 外側のショルダーだけが減り、内側に溝が残る | キャンバー角、トー角、カーブでの荷重、路面の横断勾配 |
| 内べり(片側摩耗) | 内側のショルダーだけが減る | キャンバー角が付きすぎている |
| 両肩減り(ショルダー摩耗) | 外側と内側の肩が同時に減り、中央が残る | 空気圧不足 |
| センター減り(中央摩耗) | トレッド中央だけが減り、両肩が残る | 空気圧の入れすぎ、駆動軸での使用 |
| フェザーエッジ摩耗 | ブロックの角がのこぎり刃状に立つ | 主にトーインの不良 |
ここで大事なのは、両肩減りとセンター減りは空気圧で説明できるのに対し、片側だけの外べりは空気圧では説明がつかないという点です。空気を入れ直しても外べりは止まりません。
外べりを放置するとどうなるか
減っているのは片側だけでも、車検の判定はいちばん浅い溝で行われます。内側にまだ十分な溝が残っていても、外側が1.6mmを切った時点でそのタイヤは不適合です。基準の中身は後半で詳しく扱います。
安全面でも影響が出ます。ショルダーが薄くなるとその部分の排水性能が落ち、雨の日のグリップが偏ります。タイヤ協会は偏摩耗そのものが異常振動、タイヤ音の増大、タイヤ寿命の低下を招くと説明しています。カーブでの座りが悪い、ロードノイズが増えた、という体感の変化は外べりが進んだサインです。
タイヤの外側だけ減る原因
外べりの原因は大きく4つです。横浜ゴムは片側摩耗の原因を「主にフロント装着時のキャンバーの影響」、外側のショルダーが集中的に減るステップ摩耗の原因を「フロント装着時のトーイン、キャンバーの影響」「急カーブの走行が多い」「路面傾斜の影響」と整理しています。順番に見ていきます。
キャンバー角が外側に傾いている
キャンバー角は、車を正面から見たときにタイヤが垂直からどれだけ傾いて付いているかを示す角度です。タイヤの上部が外側へ倒れている状態をポジティブキャンバー、下側が開いている状態をネガティブキャンバーと呼びます(ブリヂストン/コクピット)。

ネガティブキャンバーが付きすぎると内側だけが減ります。外べりはその逆で、キャンバーがポジティブ側にずれ、接地荷重が外側のショルダーへ寄っている状態です。段差や縁石にホイールを当てた、大きな穴を踏んだ、といった衝撃のあとに出やすく、サスペンション部品を交換したあとにも起こります。
トー角がずれている
トー角は、車を真上から見たときにタイヤのつま先が内・外どちらを向いているかを示す角度です。前方がすぼまっている状態がトーイン、開いている状態がトーアウトです(ブリヂストン/コクピット)。
トーインが過大だと、タイヤは常に内側を向いたまま前へ押し出されます。この横方向のこすれが外側のショルダーを削り、ステップ摩耗になります。トー不良の特徴的なサインがフェザーエッジ摩耗で、トレッドブロックの角がのこぎり刃のように立ちます。トレッドを手のひらで内から外へ、外から内へと交互になでてみてください。片方だけ引っかかるならトーがずれています。
カーブでの荷重の掛かり方
カーブを曲がると車体は外側へロールし、外輪の外側ショルダーに荷重が集中します。急カーブの走行が多い車で外べりが出やすいのはこのためです。車高が高く重心の高いミニバンやSUV、荷物を積んだままの車も同じ理屈で外側に負担がかかります。
アライメントが正常でも外べりが再発する場合は、走り方が原因として残っています。交差点で速度を落とす、荷物を積みっぱなしにしない、という対策のほうが効きます。
路面の横断勾配(左側だけ減る場合)
「左のタイヤだけ外側が減る」という相談は多く、これは車ではなく道路側の理由で説明できます。道路構造令第24条は、舗装道の路面に1.5〜2パーセントの横断勾配を付けると定めています。雨水を路肩へ流すための傾きで、日本の道路は中央が高く、左の路肩へ向かって下がっています。
左側通行の日本では、車は常に左下がりの面を走り続けます。車体はわずかに左へ傾き、荷重が左寄りになる。横浜ゴムも偏摩耗の原因のひとつに「路面傾斜の影響」を挙げています。長距離を走る車ほど左前タイヤの外側が先に減るのは、この積み重ねです。
空気圧で説明できるのは「両肩」までという線引き
空気圧不足はタイヤの両肩を減らし、入れすぎは中央を減らします。日本自動車タイヤ協会は空気圧不足で「タイヤの両肩部が摩耗しやすい」、空気圧過多で「タイヤの中央部が摩耗しやすい」と明記しています。外側だけが減っているケースは、この二つのどちらにも当てはまりません。
とはいえ空気圧管理を軽く見てよいわけではありません。同協会はタイヤの空気圧が1ヶ月で5パーセント程度低下するとして、最低1ヶ月に1度の点検と、自動車メーカーまたはタイヤメーカーの指定空気圧への調整を求めています。調整の許容範囲は指定空気圧を基準に0〜プラス20kPaです。空気が抜けた状態では外べりの進行も速くなるため、原因の切り分けの前にまず適正値へ戻します。
| 症状の出方 | 疑う原因 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 左右どちらか1本だけ外べり | キャンバー角、ハブ・ベアリングのガタ | アライメント測定、ジャッキアップしてガタ点検 |
| 前2本が左右対称に外べり | トー角、カーブでの荷重 | アライメント測定、トレッドを手でなでて角の立ちを確認 |
| 左側の2本が外べり | 路面の横断勾配 | 走行環境の確認、位置交換で経過を見る |
| 4本とも両肩が減る | 空気圧不足 | 冷間時にエアゲージで測定 |
| 4本とも中央が減る | 空気圧の入れすぎ | 冷間時にエアゲージで測定 |
外側が片減りしたタイヤは車検に通るか
ここが外べりでいちばん誤解されている部分です。溝の判定は接地面の平均ではなく、いちばん浅いところで行われます。内側にたっぷり溝が残っていても、外側が基準を下回れば不適合です。
残溝は「接地部の全幅のいずれの部分においても1.6mm以上」
根拠は道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第167条(走行装置)です。条文はこう定めています。
接地部は滑り止めを施したものであり、滑り止めの溝(略)は、空気入ゴムタイヤの接地部の全幅(ラグ型タイヤにあつては、空気入ゴムタイヤの接地部の中心線にそれぞれ全幅の4分の1)にわたり滑り止めのために施されている凹部(サイピング、プラットフォーム及びウエア・インジケータの部分を除く。)のいずれの部分においても1.6mm(二輪自動車及び側車付二輪自動車に備えるものにあつては、0.8mm)以上の深さを有すること。
国土交通省「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」第167条
読みどころは「接地部の全幅にわたり」「いずれの部分においても」の2つです。全幅のうち1ヶ所でも1.6mmを割れば、その時点で基準を満たしません。外べりは外側の1ヶ所が先に基準を割る減り方なので、溝の残量としてはまだ余裕があるように見えても落ちます。

スリップサイン(ウェア・インジケータ)での判定
同じ告示は「滑り止めの溝の深さについての判定は、ウエア・インジケータにより判定しても差し支えない」としています。ウェア・インジケータが一般に言うスリップサインで、溝の底に設けられた盛り上がりです。ここが路面と面一になった時点で残溝1.6mmです。
タイヤのサイドウォールにある三角形(△)の刻印が目印で、その延長線上の溝底にスリップサインがあります。外べりのタイヤでは、外側寄りのスリップサインだけが先に出ます。1ヶ所でも出ていればアウトなので、内側の溝を見て安心しないでください。
溝以外に見られる項目
同じ第167条は、溝の深さ以外にもタイヤについて次の基準を定めています。外べりが進んだタイヤはショルダーのゴムが薄くなるため、亀裂やコード層の露出につながりやすくなります。
| 項目 | 基準の内容 |
|---|---|
| 溝の深さ | 接地部の全幅にわたり、いずれの部分においても1.6mm以上(二輪自動車・側車付二輪自動車は0.8mm以上) |
| 判定方法 | ウェア・インジケータによる判定でも差し支えない |
| 破損 | 亀裂、コード層の露出等著しい破損のないものであること |
| 荷重 | タイヤに加わる荷重が、そのタイヤの負荷能力以下であること |
| 空気圧 | 空気入ゴムタイヤの空気圧が適正であること |
外べりしたタイヤを交換する限界の見極め方
1.6mmは車検の基準であって、安全上の交換時期ではない
1.6mmは「これを下回ると保安基準に適合しない」という下限です。1.6mmまで使い切ってよい、という意味ではありません。溝が浅くなるほど排水量が落ち、雨天時のグリップは早い段階から低下します。外べりのタイヤは外側だけが薄いので、コーナリング中のいちばん荷重がかかる場所から先に効かなくなるという、いやな減り方をします。
整備の現場では、外側だけが浅くなっている段階で交換かローテーションかを判断します。溝の測り方と交換の目安は別の記事にまとめてあります。
外べりが1本だけ、左右で違うときの考え方
1本だけ外べりしているときは、その1本の問題ではなく足まわりの問題です。タイヤを替えても原因が残っていれば、新品も同じ減り方をします。交換の前にアライメントを測り、必要なら調整してからタイヤを組みます。順番を逆にすると、新品タイヤで同じ費用を繰り返すことになります。
左右で減り方が違う場合、片方だけ新品にするとグリップ差が出ます。同一車軸の2本は同時に交換するのが基本です。
タイヤの外べりを見つけたあとにやること
順番があります。先に空気圧を正常値へ戻し、そのうえでアライメントを測る。この順にしないと、測定値が空気圧のずれに引きずられます。
空気圧を指定値に戻す
指定空気圧は運転席側のドア開口部などに貼られたラベルに書かれています。タイヤ側面に書かれている数値は最大空気圧なので、そちらに合わせないでください。測定はタイヤが冷えている状態で行います。走行直後は空気が膨張して高めに出ます。
日本自動車タイヤ協会は最低1ヶ月に1度の点検と、指定空気圧を基準に0〜プラス20kPaの範囲での調整を求めています。1ヶ月で5パーセント程度は自然に抜けるため、給油のたびに見る程度の頻度がちょうどいいところです。
アライメントを測定・調整する
空気圧を戻しても外べりが進むなら、アライメントの測定に進みます。測定はアライメントテスターを備えた工場で行い、ずれていた角度だけを調整します。ブリヂストンは測定料金の目安を1万5000円前後、調整料金を1箇所につき3000〜4000円程度としています。
| 作業 | 費用の目安 | 出典 |
|---|---|---|
| アライメント測定 | 1万5000円前後 | ブリヂストン |
| 調整(1箇所あたり) | 3000〜4000円程度 | ブリヂストン |
調整箇所は車種と足まわりの構造で決まります。トーは多くの車で調整できますが、キャンバーは調整機構を持たない車種があり、その場合は専用の調整パーツを追加するか、部品交換で対応します。見積もりの段階で「どの角度がどれだけずれていて、何箇所調整するのか」を測定結果の紙で見せてもらってください。
タイヤの位置交換(ローテーション)で減りを散らす
路面の横断勾配のように調整では消せない原因には、位置交換が有効です。左前だけが減っていくなら、減っていない位置と入れ替えて4本の摩耗をそろえます。
交換時期について日本自動車タイヤ協会は「タイヤの摩耗状態が車種やタイヤの種類及び走行状況等によって変わるので、一概に決めることは出来ません」としています。走行距離で機械的に決めるより、4本の減り方に差が出はじめた時点で入れ替えるほうが理にかなっています。空気圧点検のついでに4本の溝を見比べる習慣にしておくと、判断のタイミングを逃しません。
すでに外側の溝が浅く、位置交換では間に合わない状態なら交換に進みます。交換の費用や店選びは以下にまとめています。
タイヤの外べりに関するよくある質問
まとめ
外べりは空気圧の問題ではありません。空気圧で出るのは両肩か中央の摩耗で、片側だけが減るならキャンバー角、トー角、カーブでの荷重、路面の横断勾配のどれかです。左右で減り方が違うならキャンバー、前2本が対称に減るならトー、左側だけなら路面。この切り分けができれば、工場での話が早くなります。
そして車検。溝の判定は接地面のいちばん浅いところで行われます。内側に溝が残っていても、外側が1.6mmを割れば不適合です。外べりを見つけたら、まず空気圧を指定値へ戻し、それでも進むならアライメントを測る。原因を残したままタイヤだけ替えても、新品が同じ減り方をするだけです。
参考にした資料
- 国土交通省「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」第167条(走行装置)
- 一般社団法人日本自動車タイヤ協会「タイヤの選び方・使い方・整備の手引き(乗用車用タイヤ編)」
- 横浜ゴム株式会社「偏摩耗防止のために」
- 株式会社ブリヂストン「アライメント測定・調整でタイヤ長持ち」「トー、キャンバー、キャスターについて」
- 道路構造令(昭和45年政令第320号)第24条 横断勾配




