エンジンオイルのグレードとは、缶やボトルに書かれている「規格」のことです。5W-30が粘度、SPやSNと書かれている部分がグレードにあたります。整備の現場で聞かれるのはたいてい「で、結局どれを買えばいいのか」なので、先に答えを出します。
- 国産車・米国車のガソリン車は API SP以上 か ILSAC GF-6以上。2025年3月31日からは上位規格の API SQ/ILSAC GF-7 の認証が始まっています
- 欧州車は取扱説明書が指定する ACEAのカテゴリー(C3など)とメーカー承認をそのまま守る
- 4サイクルのバイクは JASO MA 系、スクーターは MB
迷ったときは取扱説明書の指定グレード以上を選べば外れません。グレードは新しいものほど要求性能が厳しく、原則として下位互換があるからです。
ただし「アルファベットが後ろのものほど高性能」が当てはまるのはAPIとILSACだけです。ACEAは性能の上下ではなく用途で分かれています。ここを取り違えると、欧州車に合わないオイルを入れてしまいます。
エンジンオイルのグレード種類

エンジンオイルのグレードとはイコール規格のことで、ちゃんとした品質が満たされているかを表しています。
日本で目にする規格は主に4つ。アメリカのAPI、日米の自動車メーカーが作ったILSAC、日本のJASO、欧州のACEAです。ガソリン用・ディーゼル用・バイク用・2サイクル用と用途ごとに分かれており、それぞれ見るべき記号が違います。順に解説します。
API規格

API規格とはEOLCSが定めた規格です。
EOLCSとは
エンジンオイル認証システム「Engine Oil Licensing and Certification System」の略。1993年にアメリカ石油協会(API)、アメリカ自動車技術者協会(SAE)、アメリカ材料試験協会(ASTM)、アメリカ自動車工業会などの団体によって構成されている。
ガソリンエンジン用規格は、酸化安定性・洗浄性・せん断安定性など複数の審査項目でSAからSQまでに分類されます。店頭で最も目にするのがこの記号です。
現行の主力はSPで、APIは2020年5月1日からSPのライセンスを開始しました。さらに上位のSQが2025年3月31日に発効し、ILSAC GF-7とセットで認証が始まっています。SNやSMのオイルも流通していますが、直噴ターボの低速早期着火(LSPI)対策とタイミングチェーンの摩耗対策が入っているのはSN Plus以降です。
ディーゼル用規格ではCA~CK-4のグレードがあり、国内ではCF-4までが主流です。
ガソリン車用は「S」、ディーゼル車用は「C」から始まるアルファベットが付くのがこの規格の特徴です。ガソリン・ディーゼル兼用のオイルなら「SL/CF」のように2つ並記されます。
関連記事:API分類とは?エンジンオイルの選び方とその違いを徹底解説
■ガソリンエンジン用規格
| グレード | 特徴 |
|---|---|
| SA | ベースオイルのみの添加剤無し |
| SB | 最低限の分散剤のみ配合 |
| SC | 防錆性能・耐摩耗性・カーボンデポジット除去性 |
| SD | SCより性能アップ |
| SE | SDより性能アップ |
| SF | 酸化・防錆・高温/低温デポジット効果向上 |
| SG | 耐摩耗性・酸化安定性向上 |
| SH | スラッジ防止・高温洗浄性が向上 |
| SJ | 蒸発安定性・せん断安定性が向上 |
| SL | 省燃費性能・排ガス浄化・オイル劣化防止が向上 |
| SM | 耐熱・耐摩耗性が向上 |
| SN | 省燃費性能持続・触媒保護性能向上 |
| SN Plus | 直噴ターボの低速早期着火(LSPI)対策を追加 |
| SP | チェーン摩耗対策・省燃費向上。2020年5月1日ライセンス開始 |
| SQ | SPの上位規格。2025年3月31日発効。ILSAC GF-7と同時導入 |
■ディーゼルエンジン用規格
| グレード | 特徴 |
|---|---|
| CA | 軽度~中負荷ディーゼルエンジン用 |
| CB | 軽度~中負荷ディーゼルエンジン用。低燃費燃焼・高硫黄含有燃料に対応 |
| CC | 自然吸気ディーゼルエンジン用。中負荷~高負荷に対応 |
| CD | 過給式ディーゼルエンジン用。幅広い燃料に対応 |
| CD-Ⅱ | 2サイクルディーゼルエンジン用 |
| CE | 高負荷過給式ディーゼルエンジン用。 |
| CF-4 | 高負荷大型ディーゼルエンジン用。低硫黄(0.5%)燃料使用。 オイル消費防止性・デポジット抑止性 |
| CF | 建設機械用。CDと同性能 |
| CF-2 | 高負荷2サイクルディーゼルエンジン用 |
| CG-4 | 高負荷ディーゼルエンジン用。低硫黄燃料使用車。 |
| CH-4 | 高負荷ディーゼルエンジン用。1998年排出ガス規制に対応。 |
| CI-4 | 高負荷ディーゼルエンジン用。2002年排出ガス規制。 |
ILSAC規格

ILSAC規格とは国際潤滑油標準化認証委員会(International Lubricant Standardization and Approval Committee)が定めたガソリンエンジン用の規格です。
APIの認証システムだけでは低品質油を市場から締め出しにくいため、ILSACが作られました。API規格と並べて「SP/GF-6」のように書かれることが多く、ILSACは「GF」の後ろの数字で世代を表します。数字が大きいほど新しく、省燃費性の要求が厳しくなります。
現行はGF-6で、粘度で2つに分かれます。0W-20・5W-20・0W-30・5W-30・10W-30に対応するGF-6Aと、0W-16専用のGF-6Bです。次世代のGF-7も同じくGF-7A(0W-20〜10W-30)とGF-7B(0W-16)に分かれ、2025年3月31日から認証が始まりました。GF-6B・GF-7Bは0W-16指定車のための規格なので、0W-20指定の車には使いません。
出典:API「Latest Oil Categories」/Mobil「ILSAC GF-7」
国内で流通しているオイルのほとんどはこのAPI規格とILSAC規格で表現されており、それぞれのマークが表記されているものであれば、品質ともに問題はありません。
JASO規格
JASO規格とは日本自動車規格「Japanese Automobile Standards Organization」が定めたエンジンオイルの規格です。主にバイク用オイルや2サイクルエンジン用のオイル規格として用いられています。
動摩擦特性指数(DFI)、静摩擦特性指数(SFI)、停止時間指数(STI)の3つの値で区分します。3つとも高い側の範囲に入ればMA、低い側に入ればMBです。粘度で分かれているわけではありません。
MAはさらにMA1とMA2に分かれます。MA2はMAの範囲のうち摩擦特性が高い側、MA1は低い側で、湿式クラッチの滑りにくさに関わる区分です。MA2指定の車両にMA1を入れるとクラッチが滑ることがあるため、指定どおりに合わせます。
出典:JASOエンジン油規格普及促進協議会「二輪自動車-4サイクルガソリンエンジン油(JASO T903:2023)の規格利用マニュアル」
■自動二輪車4サイクルエンジン油規格
| グレード | 特徴 |
|---|---|
| MA | MT車に使用。高摩擦特性・せん断安定性が高い |
| MA2 | MAの範囲のうち摩擦特性が高い側。MA2指定車に使用 |
| MA1 | MAの範囲のうち摩擦特性が低い側。MA1指定車に使用 |
| MB | スクーター用オイル。摩擦特性が低い |
■2サイクルガソリン機関潤滑油規格
| グレード | 特徴 |
|---|---|
| FA | 最低限の性能を有する |
| FB | FAより潤滑性・清浄性が向上 |
| FC | スモークレスタイプ。FBより排気系閉塞性・排気煙が向上 |
| FD | FCより清浄性が向上 |
ACEA規格
ACEA規格とは欧州自動車工業会(Association des Constructeurs Europeens d’Automobiles)が定めた規格です。BMW・VW・ポルシェなど欧州の自動車メーカーが設立した団体で、欧州車向けのオイルにはこの規格が使われます。
アウトバーン走行を想定した性能を求めるため、耐久性重視の特性になっています。APIやILSACと決定的に違うのは、カテゴリーが性能の上下ではなく用途で分かれている点です。触媒やDPFを備えた車には、灰分・硫黄・リンを抑えたCクラス(低SAPS/中SAPS)を使います。数字が大きいほど高性能、という読み方はできません。
クラスはA/B(後処理装置を持たないガソリン・小型ディーゼル用)、C(後処理装置付きのガソリン・小型ディーゼル用)、E/F(大型ディーゼル用)の3系統です。欧州車では取扱説明書がACEAカテゴリーとメーカー承認(VW 504 00、MB 229.51など)を指定しているので、そちらを優先します。
出典:ACEA「Oil Sequences 2023 Light-duty engines」/ACEA「Oil Sequences 2024 Heavy-duty engines」
■カテゴリー分類
| クラス | 対象と主なカテゴリー |
|---|---|
| A/B | 後処理装置を持たないガソリン・小型ディーゼル用(高SAPS)。A3/B4、A5/B5、A7/B7 |
| C | 触媒・DPFなど後処理装置付きのガソリン・小型ディーゼル用(低SAPS/中SAPS)。C2、C3、C4、C5、C6、C7 |
| E/F | 大型ディーゼル用。E4、E7、E8、E11、F01 |
規格から選ぶべきか?

ここまで説明したように、国産車、米国車であれば「API規格&ILSAC規格」であること、二輪車であれば「JASO規格」、ドイツ車なら「ACEA規格」のオイルを使っておけば基本問題はありません。
グレードの下限は、APIならSP以上、ILSACならGF-6以上を目安にします。SNやSMでも動きますが、直噴ターボが主流になった今のエンジンではLSPI対策の有無が効いてきます。2025年3月31日に発効したSQ/GF-7の製品も店頭に並び始めました。
気をつけるのは1点だけです。粘度は必ず取扱説明書の指定に合わせます。グレードは上位互換が効きますが、粘度は上げても下げても不具合の原因になります。0W-16指定の車に0W-20を入れる、といった置き換えはしません。
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グレードが違うオイルを入れるとどうなるか

指定より上のグレードを入れた場合、基本的に不具合は起きません。要求性能が厳しい方向なので、下位規格の役割はそのまま満たします。値段が上がるだけです。
問題は下のグレードを入れたときに出ます。直噴ターボにSN以前のオイルを使うと、LSPI対策の添加剤が入っていません。低回転高負荷で異常燃焼が起き、重症化するとピストンやコンロッドを壊します。SN Plus以降でこの対策が規格に入ったのは、実際に壊れた事例が積み上がったからです。
欧州車で起きやすいのは別の失敗です。DPF付きのディーゼルにACEA Cクラスではないオイルを入れると、灰分がDPFに溜まって詰まります。国産車向けの安いオイルを入れて数万kmでDPF交換、という話は珍しくありません。ここはグレードの上下ではなくクラスを見る場所です。
中古車や輸入車で取扱説明書が手元にない場合は、給油口キャップの刻印、エンジンカバーの表示、整備手帳の記載を順に確認します。それでも分からなければ、ディーラーに車台番号を伝えれば指定オイルが出ます。推測で入れないことです。
エンジンオイルのグレードまとめ

4つの規格を整理しました。読み方の違いさえ押さえれば迷いません。API・ILSACはアルファベットや数字が後ろほど新しく要求性能が厳しい規格、ACEAは上下ではなく用途で分かれるクラス、JASOは摩擦特性による区分です。
実務的な結論はこうなります。国産車ならAPI SP以上またはILSAC GF-6以上、欧州車は取扱説明書のACEAカテゴリーとメーカー承認、4サイクルのバイクはJASO MA系。そのうえで粘度だけは指定どおりに合わせる。2025年3月31日発効のSQ/GF-7も並び始めていますが、今SPを買って困ることはありません。
安いオイルが安い理由も、たいていはこの規格の差です。缶の表示を見れば値段の理由が分かります。




