エンジンオイルはエンジンを保護し、金属摩耗を防いだり、冷却効果や洗浄効果をもたらします。自動車の血液とよく表現されていますが、常にきれいな状態でないとエンジンの調子が悪くなり、エンジンの故障に繋がってしまいます。
エンジンオイルは普段はエンジン内を循環しており、エンジン下部に取り付けられているオイルパンという場所に蓄積されています。それをオイルポンプで吸い上げることで、エンジン全体に流れていきます。この記事ではエンジンオイルの役割についてを解説しています。
エンジンオイルの役割 – エンジンを守る6つの作用 –
自動車のエンジン内部では、多数の金属部品が複雑に組み合わさり、高速で運動することで動力を生み出しています。この精密な機械の心臓部を守るために、エンジンオイルは必要不可欠です。エンジンオイルは、単なる潤滑油ではなく、エンジン内部で多岐にわたる重要な役割を担っています。[1]
エンジンオイルの6つの役割
エンジンオイルは、エンジン内部で以下の6つの重要な役割を担っています。[2]
- 冷却作用
- 密封作用
- 洗浄作用
- 防錆作用
- 潤滑作用
- 応力分散作用
以下、それぞれの役割について詳しく見ていきましょう。
1. 冷却作用
エンジンは、燃料を燃焼させることで動力を得ますが、その過程で高温が発生します。エンジンオイルは、この熱を吸収し、オイルパンやオイルクーラーへと循環することでエンジンを冷却する役割を担っています。[3] 特に、ピストンやシリンダーヘッドなど、高温になる部分に直接触れることで、効果的に熱を奪い、エンジンのオーバーヒートを防ぎます。[1]
2. 密封作用
エンジン内部では、ピストンがシリンダー内を上下に激しく動いていますが、ピストンとシリンダーの間にはわずかな隙間が存在します。エンジンオイルは、この隙間を薄い油膜で覆うことで密封し、燃焼室からの圧縮漏れを防ぐ役割を担っています。[4] もし、この密封が不十分だと、エンジンのパワーが低下したり、燃費が悪化したりする原因となります。[3]
3. 洗浄作用
エンジン内部では、燃料の燃焼やオイルの酸化などによって、スラッジやカーボンなどの汚れが発生します。エンジンオイルは、これらの汚れを包み込み、オイルフィルターでろ過することで、エンジン内部をクリーンに保つ役割を担っています。[2] エンジンオイルに含まれる清浄分散剤は、汚れを細かく分散させ、エンジン内部への付着を防ぐ効果も持ち合わせています。[4]
4. 防錆作用
エンジン内部の金属部品は、高温多湿な環境にさらされるため、錆が発生しやすい状態にあります。エンジンオイルは、金属表面に油膜を形成することで、水分や酸素との接触を防ぎ、錆の発生を抑制する役割を担っています。[4] 特に、エンジン停止中は、オイルが金属表面を覆うことで、湿気による錆を防ぐ効果が高まります。
5. 潤滑作用
エンジン内部では、クランクシャフトやカムシャフト、ピストンなど、多くの金属部品が互いに接触しながら高速で回転しています。エンジンオイルは、これらの金属部品の間に油膜を形成することで、摩擦を低減し、摩耗を防ぐ役割を担っています。[5] これにより、エンジンのスムーズな動作を促し、部品の寿命を延ばす効果も期待できます。[2] [1]
6. 応力分散作用
エンジン内部の金属部品は、燃焼圧力や回転運動などによって、常に大きな応力にさらされています。エンジンオイルは、これらの応力を分散させることで、部品の損傷を防ぎ、エンジンの耐久性を向上させる役割を担っています。[6] 特に、高回転時や高負荷時には、この応力分散作用がより重要になります。
エンジンオイルの規格
エンジンオイルには、品質や性能を保証するための規格がいくつか存在します。ここでは、代表的な規格であるAPI、ILSAC、ACEAについて解説します。
API規格
API(American Petroleum Institute:アメリカ石油協会)規格は、エンジンオイルの品質を分類する規格です。ガソリンエンジン用は「S」から始まるアルファベットで、ディーゼルエンジン用は「C」から始まるアルファベットで表されます。 アルファベットの後の文字は、性能レベルを表しており、新しい規格ほど高性能です。例えば、「SN」は「SM」よりも高性能なガソリンエンジンオイルであることを示します。 API規格に適合しないエンジンオイルを使用すると、エンジンに damage を与える可能性があるので、注意が必要です。
ILSAC規格
ILSAC(International Lubricant Standardization and Approval Committee:国際潤滑油標準化承認委員会)規格は、省燃費性能に重点を置いたガソリンエンジンオイルの規格です。API規格と連携しており、ILSAC GF-6Aなどのように表記されます。 数字が大きいほど、省燃費性能が高いことを示します。
ACEA規格
ACEA(Association des Constructeurs Européens d’Automobiles:欧州自動車工業会)規格は、ヨーロッパの自動車メーカーが中心となって制定したエンジンオイルの規格です。 ガソリンエンジン用は「A」、ディーゼルエンジン用は「B」、乗用車用ディーゼルエンジンと触媒付きディーゼルエンジン用は「C」、大型車用ディーゼルエンジン用は「E」で表されます。 API規格と同様に、アルファベットの後の数字が大きいほど高性能です。
関連記事:API分類とは?
エンジンオイルの粘度
エンジンオイルの粘度は、SAE(Society of Automotive Engineers:米国自動車技術者協会)粘度表記で表されます。SAE粘度表記は、「0W-20」や「5W-30」のように、数字と「W」を組み合わせて表記されます。 「W」はWinter(冬)の略で、Wの前の数字が小さいほど、低温時の流動性が高いことを示します。 例えば、「5W-30」のエンジンオイルは、「10W-30」のエンジンオイルよりも、低温時における流動性が高く、寒い時期でもエンジンをスムーズに始動することができます。Wの後の数字は、高温時の粘度を表し、数字が大きいほど、高温時の粘度が高いことを示します。
エンジンオイルの粘度は、温度によって変化します。温度が低いときは粘度が高くなり、温度が高いときは粘度が低くなります。 適切な粘度のエンジンオイルを選ぶことは、エンジンの性能を維持し、燃費を向上させるために重要です。 粘度が低すぎると、油膜が薄くなり、摩擦や摩耗が増加する可能性があります。一方、粘度が高すぎると、オイルの流動性が悪くなり、エンジン内部の抵抗が増加し、燃費が悪化する可能性があります。
関連記事:エンジンオイルの粘度の見方は簡単!
エンジンオイルのベースオイル
エンジンオイルは、ベースオイルに添加剤を加えて製造されます。ベースオイルには、鉱物油、部分合成油、全合成油の3種類があります。それぞれのベースオイルの特徴を以下の表にまとめます。
ベースオイルの種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
鉱物油 | 原油から精製されたベースオイル | 価格が安い | 酸化安定性や耐熱性に劣る |
部分合成油 | 鉱物油に合成油を混合したベースオイル | 鉱物油と全合成油の中間の性能を持つ | – |
全合成油 | 人工的に合成されたベースオイル | 酸化安定性、耐熱性、低温流動性に優れている | 価格が高い |
関連記事:エンジンオイルのベースオイルの種類
エンジンオイルの選び方
エンジンオイルを選ぶ際には、以下の点に注意する必要があります。
- 車の取扱説明書に記載されている推奨オイル規格を確認する。
- 車の使用状況(走行距離、走行環境など)を考慮する。
- 自分の車のエンジンに適した粘度を選ぶ。
- ベースオイルの種類を選ぶ。
関連記事:【現役整備士解説】エンジンオイルの正しい選び方を解説
まとめ
エンジンオイルは、エンジンの性能を維持し、寿命を延ばすために非常に重要な役割を担っています。エンジンオイルは、エンジン内部の摩擦を減らし、摩耗を抑制することで、部品の寿命を延ばし、エンジンのスムーズな動作を維持します。 また、エンジンオイルは冷却、密封、洗浄、防錆など、様々な役割を担っています。
エンジンオイルを選ぶ際には、API、ILSAC、ACEAなどの規格、SAE粘度表記、ベースオイルの種類、添加剤などを考慮する必要があります。 車の取扱説明書に記載されている推奨オイル規格や粘度を確認し、車の使用状況に合わせて、適切なエンジンオイルを選びましょう。 定期的なオイル交換も、エンジンの performance を維持するために重要です。 正しいエンジンオイルを選び、適切なメンテナンスを行うことで、愛車のエンジンを long life 化し、快適なドライブを楽しむことができます。